ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:釘丸和也)は、株式会社おせっかい倶楽部(本社:東京都港区、代表:森谷敏夫)が開発した次世代のEMS技術(補足資料1)についてフェムテック※1としての活用可能性を見出し、女性を対象にストレス、メンタルヘルスや女性特有の心身の悩みなど、こころとからだに対する影響を検証しました。本プロジェクトは「令和4年度 経済産業省フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」の採択を受け、実施しました(補足資料2)
※1 「Female(女性)」と「Technology(技術)」を掛け合わせた造語で、技術を活用して女性のさまざまな課題を解決するプロダクトやサービス
女性のストレス・メンタルヘルス課題を解消し、well-beingを向上させるソリューションの開発を開始
ポーラ・オルビスグループは2029年の創業100周年に向けて事業ポートフォリオをwell-beingへ広げ、世界中の人々の人生を彩ることをビジョンに掲げています。その中で、ポーラ化成工業は多くの女性の悩みを解決してきた「経験」と「技術力」を活かし、科学的エビデンスに基づいたフェムテックの開発に取り組んでいます。
女性活躍が一般化する中、働く世代の女性は月経前や更年期に女性ホルモンの変動による不調を抱える人も多く、こころとからだには大きな負担がかかっています。さまざまな心身の不調に対して「運動」が効果的ですが、特に働く世代の女性は「忙しく時間がない」といった理由で実践できていない人が多いのが現状です(補足資料3)。そこで、無理なく継続的に実施できる効果的なセルフケアソリューションの開発を目指し、短時間の筋刺激プログラムで運動と同等以上の効果が期待できる次世代のEMS技術に着目しました。
次世代EMS技術の使用前後のこころとからだの状態を解析
次世代EMS技術(以下、「EMS」)の継続使用による変化を調べるため、20-50代の女性計59名を2群に分け、片方だけにEMS(1回14分の筋刺激プログラム)を8週間、週3日以上の頻度で使用してもらい、心身の状態を評価しました(補足資料4)。これとは別に、16名に対して単回使用前後のストレスや心理状態、血中ホルモンの変化を調べ、30分間の歩行運動の結果と比べました(補足資料5)。
さまざまな心身の状態がポジティブに変化
8週間の試験にて、いつも通り生活した群では試験期間前後でほとんど変化がありませんでしたが、EMS使用群ではストレスやメンタルヘルス、睡眠の質、疲れやすさなどで有意な変化がありました(図1、 補足資料4)。また、単回使用でもネガティブ心理の低下とポジティブ心理の向上が見られ、それは30分の歩行と同等以上の結果でした(補足資料5)。加えて、EMS使用でのみ、快楽や幸福感、ストレス低下に寄与する幸福ホルモン「β-エンドルフィン」が有意に増加し、幸福感も実際に増加(図1)していました。
試験後の定性調査でも多くの好意的意見が得られ、継続利用意向率も93%と高かったことから、次世代EMS技術が女性のこころとからだをケアするフェムテックとして有望であることが示唆されました。
この結果を基に、ポーラ・オルビスグループでは本技術の社会実装と人々のQOLやwell-being向上を目指し取り組んでいきます。
【森谷敏夫先生のコメント】
約45 年の研究成果を社会実装するため、2019 年に㈱おせっかい倶楽部を設立し開発を進めてきた次世代EMSが完成し、女性の心身の健康に貢献できることが示されました。このEMS による他動的運動療法で、世界中の人々に革新的なセルフケアをお届けしたいと思っています。
森谷敏夫(株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役、京都大学 名誉教授)
【補足資料1】 次世代EMS技術について
約45年にわたり筋肉とEMS(筋電気刺激)の研究をしてきた、株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役で京都大学 名誉教授の森谷敏夫氏が開発した最新のEMS技術です。
- 特長(従来のEMS技術との違い)
- 下肢から腹背周囲、骨盤の奥のインナーマッスルまで、広範囲・深部の筋肉を高強度で刺激できる独自設計により、従来のEMSとは異なる体感性
- 独自素材を用いた新型ベルト電極の開発により、従来のEMSで感じる電気刺激特有の不快感(ピリピリ感、しびれ感、痛みなど)を緩和
- 最新の運動生理学・トレーニング科学の理論に基づいた刺激プログラムにより、飽きがこない体験を実現
- 株式会社おせっかい俱楽部
予防医療の普及推進を目指して設立されたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会から派生し、次世代EMS技術をはじめとした科学的エビデンスに基づくコンテンツを社会実装していくことを目的として2019年に設立。“おせっかい”の由来は行動経済学の“Nudge(ナッジ)”。健康生活への一歩を踏み出せない方々の背中を少しだけ押すような“おせっかい”な商品やサービスの提供を目指す。
株式会社おせっかい俱楽部HP
➣ https://www.osekkaiclub.co.jp/
次世代EMS紹介ページ
➣ https://www.osekkaiclub.co.jp/myomed
【補足資料2】 令和4年度 経済産業省フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金について
働く女性の妊娠・出産・更年期等ライフイベントに起因する望まない離職等を防ぎ、企業の人材多様性を高め、企業の価値創造につなげることを目指し、経済産業省が令和3年度から立ち上げたフェムテックを活用した働く女性の就業継続支援。令和4年度は、応募総数82事業の中から19事業が採択されました。
- 採択プロジェクト名
運動後の爽快感が味わえる「次世代EMS」を活用した、働く女性のメンタルヘルス・パフォーマンス向上事業
- 連携先
株式会社おせっかい俱楽部
京都大学医学部 婦人科学産科学教室 女性健康医学研究室
上馬整形外科クリニック
経済産業省フェムテック等サポートサービス実証事業HP
➣ https://www.femtech-projects.jp/
令和4年度 採択結果
➣ https://www.pwc.com/jp/ja/news-room/femtech-public-offer2206.html
弊社プロジェクト紹介ページ
➣ https://www.femtech-projects.jp/project/38.html
- ポーラ・オルビスグループの採択実績
令和3年度は、心と体を満たすスマートフォンアプリ「me-fullness」に関するプロジェクトが採択されました。ポーラ化成工業では、技術に立脚して女性のwell-beingを実現する研究開発を積極的に実施しています。
➣ 参考リリース:「心と体を満たす“me-fullness”プロジェクトが経産省補助事業に採択」(2021年7月21日)
http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20210721.pdf
【補足資料3】 働く世代の女性の運動習慣に関する現状
厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査結果」によると、働く世代の中でも特に20-40代女性の運動習慣割合が10%前後と低いことがわかります(図2)。20-40代の女性はPMSをはじめとした月経に関する症状、妊娠・出産や更年期障害など、さまざまな心身の不調や変化を伴う年代である一方、最も運動できていないのです。
また、働く世代の運動阻害要因は、スポーツ庁の「令和2年度 スポーツの実施状況等に関する世論調査」によると、男女ともに「仕事や家事が忙しいから」と「面倒くさいから」が大部分を占めていることがわかります(図3)。
【補足資料4】 8週間の長期連用試験
- 被験者
23-55歳の女性59名(うち29名は23-44歳、30名は45-55歳)
- 試験デザイン(ランダム化比較試験)
23-44歳の29名、45-55歳の30名をそれぞれランダムに2群に分け、片方には通常通りの生活を送ってもらい(対照群)、もう片方には次世代EMS技術を使い2日に1回以上、筋刺激を行ってもらいました(EMS使用群)。8週間の使用期間の前後で下記の項目を評価しました。
- 評価項目・方法
- 結果
いつも通り生活した対照群:
試験期間の前後で、ほとんど変化はありませんでした。
EMS使用群:
試験期間の前後で、下記の項目に有意な変化が確認されました。
ストレス・メンタルヘルス : 総合ストレス、怒り、腹立たしさ、へとへと、ゆううつ、面倒さ、集中できない、気分が晴れない、悲しさ など
ポジティブ心理 : 総合ポジティブ情動、強気、決心、やる気、機敏 など
月経前のメンタル不調 : 気分の沈み、悲しみ、落ち込み、気の滅入り、不安、緊張、ピリピリ、イライラ、怒り、人との衝突 など
更年期の不調 : 疲れやすさ、腰痛の痛み、顔のほてり、汗のかきやすさ など
その他 : 睡眠の質、体のむくみ など
【補足資料5】 単回介入試験
- 被験者
23-55歳の女性16名
- 試験デザイン (クロスオーバー比較試験)
16名の被験者をランダムにA群とB群の2群に分け、A群は次世代EMS技術を使った14分間の筋刺激、B群は30分間の歩行運動※4を実施。その1週間後にタスクを入れ替え、A群は歩行、B群は次世代EMSによる筋刺激を実施してもらい、タスクの前後で下記を評価しました。
※4 負荷量は被験者ごとに次世代EMS使用時の心拍数に合わせて実施
- 評価項目・方法
- 結果
・ 各種心理状態
POMS2およびVAS
次世代EMS技術による単回の筋刺激により、下記の項目が有意に変化しました。
これは比較として実施した30分の歩行運動よりも多くの項目で変化するという結果でした。
筋刺激により変化した項目: 怒り、抑うつ、落ち込み、緊張、不安、ストレス※、爽快感、覚醒、集中※、高揚感、活性、幸福感※ など
※ 歩行運動では変化がなかった項目
脳波計測
次世代EMS技術による筋刺激中は、歩行中よりも「快適」「好き」「ストレス」の脳反応が良好でした。
このことから、次世代EMS技術は歩行よりも心理的に快適で好まれ、かつ半分以下の時間でありながら、歩行と同等以上に心理状態の変化を引き起こすことが明らかとなりました。
・ 血中ホルモン
快楽や幸福感、ストレス低下に寄与する幸福ホルモン「β-エンドルフィン」が有意に増加していたことから、次世代EMSの心理状態変化のメカニズムにβ-エンドルフィンが関与していることが示唆されました。