ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:片桐崇行)は、液状ファンデーションが衣服へ付着する「色移り」の課題を新アプローチで解決した学術論文(補足資料1)で、日本化粧品技術者会(SCCJ)の第27回SCCJ優秀論文表彰にて「ACST誌優秀論文賞」(補足資料2)を受賞しました。本賞は、化粧品技術の発展に寄与する優れた論文を表彰するものです。本技術はポーラ・オルビスグループの製品に応用されています。
【受賞論文タイトル】
A Secondary Adhesionless Foundation with a Porous Structure Prepared using a Particle-Stabilized Emulsion
(粒子安定化エマルションを用いて作製した、多孔構造を有する二次付着防止型ファンデーション)
【受賞論文の概要】 (補足資料3)
ポーラ化成工業 中谷研究員らのチームは、液状ファンデーションが衣服へ付着する「色移り」という課題に対し、新たな発想で解決する技術を開発しました。
色移りを防ぐために、従来は乾燥促進などで対応してきましたが、使用感との両立が課題でした。そこで本研究では、乾燥の速さではなく、塗布後に形成される膜の構造そのものに着目。ポーラ化成工業の得意とする「粉体乳化」の手法を活用し、微細なシリカ粒子で乳化した新しい液状ファンデーションを開発しました(図1)。これを肌に塗布すると、表面に“乳化滴の抜け殻”の細かい空隙が無数に存在する構造(多孔構造)が形成されます。
この多孔構造により、ファンデーション膜はうるおいを保ったまま表面のみすばやくさらっとした状態となり、衣類との直接接触を抑えるバリア層として機能します。その結果、短い乾燥時間、摩擦・圧力が加わる条件でも高い耐付着性を示し、色移りを最大90%低減することが示されました。

動画による説明はこちら
https://youtu.be/diFmhm1uKgc
研究のポイント
“乳化滴の抜け殻”を活かして多孔構造を形成するという新発想により、色移りしにくさと快適な使い心地を両立
【筆頭著者コメント】
中谷 明弘 主任研究員
珪藻土のバスマットに着想を得て、表面はさらっと、中は潤いを保つという理想的なファンデーション膜の設計を目指した研究です。快適な使用感と衣服への高い二次付着抑制を両立し、生活の中のストレスを大幅に軽減する新技術にご期待ください。
ポーラ化成工業は、グループ理念「感受性のスイッチを全開にする」のもと、今後も生活者視点に立った研究開発を通じて、機能性と使い心地を兼ね備えた化粧品の創出に貢献していきます。
【補足資料1】 受賞論文と著者について
■論文情報
掲載先:Applied Cosmetic Science & Technology(ACST誌) 1(2): p187–195
タイトル:A Secondary Adhesionless Foundation with a Porous Structure Prepared using a Particle-Stabilized Emulsion
著者:Akihiro Nakatani*1, Kana Nanahara1 and Ryo Murakami2
1 POLA Chemical Industries Inc., Kanagawa, 2 Department of Chemistry, Konan University, Hyogo
和訳タイトル:粒子安定化エマルションを用いて作製した、多孔構造を有する二次付着防止型ファンデーション
著者:中谷 明弘1、七原 加奈1、村上 良2 1:ポーラ化成工業株式会社/2:甲南大学
■論文へのリンク https://sccj-acst.org/10.69336/acst.2025-01/data/index.pdf
■筆頭著者プロフィール
中谷 明弘(なかたに あきひろ) ポーラ化成工業 テクニカルディベロップメントセンター 研究員
2010年に入社後、スキンケア、サンケア、ベースメークと幅広い処方開発に従事。微粒子で乳化を行うピッカリングエマルションなどを活用した新剤型研究に取り組んでいます。
【補足資料2】 日本化粧品技術者会(SCCJ)の優秀論文表彰とACST誌優秀論文賞について
日本化粧品技術者会(SCCJ)は、和文誌であるSCCJ誌と英文誌であるACST(Applied Cosmetic Science and Technology)の2誌を発行しています。優秀論文賞は、これらに掲載された論文を対象として、優秀なものに授与されます。今回のACST誌優秀論文賞は、2025年にACST誌に掲載されたオリジナル論文を対象に選考されました。
関連サイト
優秀論文賞 | ジャーナル | 日本化粧品技術者会 SCCJ
https://www.sccj-ifscc.com/journal/excellent
【補足資料3】 研究内容の補足
液状ファンデーションにおける色移り悩みとニーズの高さ
液状ファンデーションの衣類への色移りは、日常の使いやすさや満足度に関わる重要な課題として認識されています(図2)。

従来、色移りを防ぐためには、塗布後の乾燥を早めるなどの方法がとられてきました。しかし、こうした方法では乾燥感が生じたり、膜のしなやかさが損なわれたりすることがあり、使用感との両立が課題でした。
新発想:多孔構造で色移りを防ぐ ー多孔構造を生み出す独自技術ー
本研究では、乾燥の速さそのものではなく、塗布後に形成される膜の構造に着目しました。ポーラ化成工業が得意とする「粉体乳化」の手法を活用し、微細なシリカ粒子で乳化した新しい液状ファンデーションを開発しました。
このファンデーションを肌に塗布すると、表面では乳化滴中の水分が蒸発し、“乳化滴の抜け殻”に由来する微細な空隙をもつ多孔構造(ポーラス構造)が形成されます。一方で、膜内部はしなやかさを保つため、さらっとした表面性と快適な使用感を両立できます。
色移り低減効果と応用可能性
この多孔構造により、ファンデーション膜の表面はすばやくさらっとした状態となり、衣類との直接接触を抑えるバリア層として機能します。その結果、まだ乾ききっていない状態や、摩擦・圧力が加わる条件でも高い耐付着性を示し、色移りを最大90%低減することが示されました。
また、表面のみをすばやくさらさらにする構造制御によって、衣類への付着を抑える新しい設計概念を示しました。メーク直後の着替えや摩擦が生じる場面でも、色移りしにくい高い耐付着性が期待されます。
さらに、本技術はファンデーションにとどまらず、サンスクリーンやメイクアップ製品全般への応用も期待され、化粧品の機能設計に新たな可能性を広げる成果です。