ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:釘丸和也)の加治 恵 研究員が、国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)の専門学術誌 “IFSCC Magazine” において、優秀賞にあたるHenry Maso Award Honorary Mentionを受賞しました。
●受賞対象となった研究について
受賞の対象となったのは、一般の方が自宅で化粧品の乳化を行える技術と化粧品の新たな楽しみ方を提案した論文です。この研究は、2020年10月に開催された第31回国際化粧品技術者会連盟(以下 IFSCC)世界大会(Congress)の口頭発表部門でも発表され、化粧品技術者から多くの注目を集めました。
■論文タイトル 『DIYコスメ -自分好みのエマルションを作りだす楽しみを-』
(英文名 “Do-It-Yourself cosmetics – The pleasure of creating your own emulsions”)
■著者 ポーラ化成工業㈱ 加治 恵、岩永 知幸、竹山 雄一郎、松尾 一貴、荒井 俊博
東京理科大学理工学部先端化学科 酒井 健一、酒井 秀樹
■発表内容概要
DIY(Do-It-Yourself)は世界中で人気です。しかし乳液やクリームなど本格的な化粧品を作るために必要な「乳化※1」には、専門の知識や混合装置、複雑な作業工程などが必要でした。そこで、家庭で化粧品をDIYすることができる新乳化剤「M-ポリマー」を設計・開発しました。 ※1 水と油を混ぜ合わせる技術。
M-ポリマーは、ペンダントのような形の高分子(ポリマー)で、水に入れるときゅっと折りたたまれて小さなボール状の粒子になり、油滴の表面に自然に吸着するようになります(図1)。この性質により、M-ポリマー水溶液に好きな油や保湿剤を加え混ぜるだけでさまざまな種類の油をスムーズに乳化することができます。
化粧品を作ったことのない方21名がM-ポリマーでの化粧品作りに挑戦したところ、全員が乳液やクリーム、クレンジングなど好きなアイテムを作ることに成功、カスタマイズの自由度にも満足と答えました。簡単に作れることや、いろいろな感触に調整できる点も高く評価され、多くの方が「楽しい」「満足」「またやりたい」と答えました。
ポーラ・オルビスグループでは、本技術を使用したサービスの提供を目指して検討を進めています。
グループの理念「感受性のスイッチを全開にする」を体現するべく革新的な乳化技術の研究を進め業界の発展に貢献するとともに、美やコミュニケーションの発展に貢献していきたいと考えています。
【補足資料1】 IFSCC MagazineとHenry Maso Awardについて
IFSCC Magazine は、世界中の化粧品技術者・研究者の学会の専門学術誌で、最先端の化粧品技術の論文が掲載されます。
Henry Maso Awardは、直近の2年間に掲載された中で、40歳以下の著者による最も優れた論文に贈られる最優秀賞です。Honorary Mentionは最優秀賞に匹敵する優れた論文があったときのみに贈られる賞です。
【補足資料2】 受賞者のプロフィール
加治 恵 (かじ めぐみ)
ポーラ化成工業 製品設計開発部 研究員
博士(工学)
〔略歴〕
2007年にポーラ化成工業に入社。
乳化技術の研究のスペシャリスト。専門は界面化学で、これまでに化粧水、乳液、クリームなどスキンケア製品を中心とした製剤の研究を行ってきました。基礎研究の他、ポーラ・オルビスグループの多くの製品開発に携わっています。
これまで開発に携わった主な製品
POLA(ポーラ): B.A ザ ローション
ORBIS(オルビス): オルビスユー アンコールシリーズ
DECENCIA(ディセンシア): ディセンシーシリーズ など
【補足資料 3】 M-ポリマーによる乳化について
M-ポリマーによる乳化には、以下のような利点があります。
1.作りやすい
① 専門の知識なしで実践できる
② 混ぜるだけ(温度の管理がいらない)
2.カスタマイズが楽しめる
① 好きな材料を、好きなだけ配合可能 組み合わせは自由自在
② クリームだけでなく、乳液やクレンジングまでユーザーのお好み次第
③ さっぱりからこっくりまで、好きな感触に
3.完成品の質がよい
① 感触がよく、分離しにくい