株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林 一俊)は、沖縄のサンゴ養殖の専門家である浩二氏と連携して、実際の日やけ止め使用がサンゴの成育に与える影響を確認できる評価法を確立しました。この方法により、紫外線吸収剤の有無の両方で、当社で汎用されている日やけ止め剤型(ジェル、ミルク)を評価したところ、いずれもサンゴの成育に悪影響を与えないことが確認できました。
研究の概要
日やけ止めに含まれる一部の紫外線防御成分はサンゴの成育への悪影響が報告されており、米国ハワイ州などのサンゴ礁を有する地域では販売や持込み、使用が禁止されています。一方で米国パーソナルケア製品評議会(PCPC:Personal Care Products Council)では科学的根拠が十分でないと懸念しており、紫外線から人々を守る有効な手段である日やけ止め料の使用を控えることには慎重な姿勢をとっています。
当社ではこのような状況を踏まえて、2009年から継続している雪肌精「SAVE the BLUE」プロジェクトによるサンゴ保全への取り組みを研究領域にも広げ、2022年2月にはメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(オクチノキサート)など7種類の紫外線防御成分が環境濃度においてサンゴの成育に影響を与えないことを確認しました※1。今回は実際の日やけ止め使用がサンゴに与える影響を評価できる方法を確立し、汎用される日やけ止め剤型(ジェル、ミルク)にてサンゴの成育に影響を与えないことを確認しました。
※1 2022年2月7日発行 ニュースリリース https://www.kose.co.jp/company/ja/content/uploads/2022/02/20220207.pdf
実使用を担保できるサンゴ評価法の構築
当社と金城氏で確立した水槽内でサンゴを健全に飼育する実験系※1を用い、実際の日やけ止めの使用を想定したサンゴ成育への影響評価を行いました。実際の使用状況に近づけるため、基板上に一定量の日やけ止め製剤を塗布し、乾燥させたものを試験サンプルとしました。塗布量は、成人の平均的な体表面積と、日やけ止めの推奨使用量である1cm2あたり2mgから算出しました。これは全身に日やけ止めを塗った大人10人が25mプール1レーンに入った濃度に相当しており、日やけ止め使用者が密にいる状況を想定してサンゴへの影響を評価することができます(図1)。
サンゴ検体には造礁サンゴのひとつであるウスエダミドリイシを用い、実際の海水中を想定して、適度な水流を発生させた水槽内にこの試験サンプルを設置し、その中で2週間の飼育実験を行いました。サンゴの健康状態は、専門家による目視評価と画像評価により判定しました。
サンゴへの影響評価
構築した実験系にて、代表的な4種類の日やけ止め製剤を用い、これらの使用がサンゴの成育に与える影響を評価しました。日やけ止め製剤は、ジェル剤型と二層式ミルク剤型の2剤型で、それぞれ紫外線吸収剤を使用しているもの、使用していないものの計4種類を用いました。紫外線の防御効果の指標であるSPFとPAは当社で汎用されるスペックをカバーできるよう、SPF 35~50+、PA +++ ~ ++++の範囲で設定しました(図1)。使用した紫外線吸収剤としては当社で汎用されるメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(オクチノキサート)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ポリシリコーン-15の4種類を、紫外線散乱剤としては酸化亜鉛、酸化チタンの2種類を選択しました。
これらの日やけ止め製剤それぞれに対して試験サンプルを作成し、水槽内に設置して2週間の飼育実験を行いました。2週間後の目視評価および画像評価の結果、どの検体においても、サンゴの成育に異常は見られませんでした(図1)。以上から、今回の4種類の日やけ止めは、実際の使用において、サンゴの成育に影響を及ぼさないことが確認できました。
今後の展望
本研究により、日やけ止めを実使用した際のサンゴへの影響を評価できる方法が確立できました。今後、これを応用することで、市販される日やけ止め製剤や使用シーンの変化に合わせたサンゴへの影響を保証することが可能となります。本研究を活用し、「海に入る人の肌を紫外線から守りながら、サンゴにもやさしい化粧品の開発」を実現していきます。
雪肌精「SAVE the BLUE」プロジェクト
当社は、雪肌精「SAVE the BLUE」プロジェクトを通じて、2009年より沖縄のサンゴを保全する、有限会社「海の種」(代表:浩二、所在地:沖縄県読谷村)の活動を支援しています。毎年、夏期のキャンペーン期間中に販売した『雪肌精』ブランドの対象商品のボトルの底面積の合計に相当する面積の環境保全費用をサンゴ育成活動費用として寄附し、これまでに植え付けられたサンゴの面積は、13年間で、25mプール約30.8面分相当になりました。
そうした中、金城氏が育てて海底に植えつけたサンゴの中から、海水温が上昇しても白化に強い「奇跡のサンゴ」が発見され、注目されています。水深の浅いところで育てられたため、紫外線や暑さに耐性ができたのではないかと言われています。
2018年からは、プロジェクト10年目を機に、夏期の活動に加え、東北の森を守る冬期のキャンペーンも新たに開始。2019年春に、初めて東北エリアで広葉樹の植樹を行いました。また、『雪肌精』を販売している海外の9つの国と地域(中国・台湾・香港・韓国・タイ・シンガポール・マレーシア・インドネシア・アメリカ)にて、各エリアの独自性を活かした様々な活動を通じて、プロジェクトを盛り上げています。
◇雪肌精 「SAVE the BLUE」 Web サイト
http://www.savetheblue.sekkisei.com/
◇コーセー企業情報 サステナビリティ 雪肌精「SAVE the BLUE」プロジェクト
https://www.kose.co.jp/company/ja/sustainability/special1/
共同研究者 金城浩二氏 プロフィール
有限会社海の種 代表取締役
〒904-0323 沖縄県読谷村字高志保915番地
「さんご畑~陸上のサンゴ礁~」を運営
http://www.sangobatake.jp/
(略歴)
1998年 サンゴの養殖を開始。
2004年 移植した養殖サンゴの産卵に成功
2009年 「さんご畑」が読谷村にオープン。
コーセーが「SAVE the BLUE」プロジェクトを通じた活動支援を開始
2010年 金城氏を主人公のモデルとした映画
「てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~」が上映
2016年 養殖サンゴの中から、海水温が上昇しても白化しにくいサンゴが発見される。