日常生活で無意識のうちに、ついつい触れている自分の髪。きれいな髪の時はいつも以上に触れたくなりませんか? 今回は、きれいな髪に触れることで、生理的(オキシトシン※1)および心理的(感情・自己意識)にどのような影響があるかを検討しました。
これまでに、髪のキメ※2を実感するとポジティブな感情が高まり、自己意識や美容行動にも影響を与える可能性があることを報告していますが※3、髪に触れる行為により生理的にも変化が生じるかどうかは明らかではありませんでした。そこで今回、生理的な変化を捉える生体反応指標として「オキシトシン」に着目しました。女性11名に洗髪・トリートメント・スタイリング施術を行ない、触れる前後で唾液中のオキシトシン量が変化するかを調べました。同時に、触れた時に感じた髪の状態について10項目※4の視点で評価してもらい、その際に生じる感情と自己意識の評価を行ないました。
生理的な影響:髪に触れて “髪のキメ” を感じるほど、オキシトシン量が上昇
唾液中のオキシトシン量の変化と、触れた時に感じた髪の状態についての各項目の評価との関連性を検討した結果、「髪のキメ」の項目のみ、評価が高くなるほどオキシトシン量が上昇する傾向があることがわかりました(図1)。
心理的な影響:髪に触れて “髪のキメ” を感じるほど、感情や自己意識にポジティブな変化も
髪に触れる前後における感情の変化を、化粧版感情評価尺度※6を用いて評価した結果、「髪のキメ」の評価が高いほど「贅沢感」「幸福・満足」「ときめき」などの感情を強く感じ、ポジティブな感情が生起されたことがわかりました。さらに、自己意識や美容行動について質問したところ、「髪のキメ」の評価が高いほど「自分のことが好きになれた」「スキンケアやメイクを変えたくなった」などの評価が高くなり、自己意識にもポジティブな影響を与えたことがわかりました。
今回の検討では、髪に触れて “髪のキメ” を感じた時には、体内にも変化が現れ、感情や自己意識にまで影響する可能性が示唆されました。
これからも、ヘアケアを通じて一人ひとりが自分に自信を持ち、自分らしく生きられるような明るい社会の実現に向けて貢献していきます。
本研究は、第24回日本感性工学会大会(2022年8月31日~9月2日、オンライン開催)にて発表しました。
※1 脳内で合成されるホルモンのひとつで、分泌量が上昇することにより、愛着関係を深めたり、ストレスを軽くしたり、情緒を安定させたり、自己肯定感を高めたりする働きがある。
※2 毛流れがそろって毛髪1本1本がきれいに並んでいる状態のこと。
※3 花王研究レポート(2021年12月17日):“髪のキメ”によってポジティブな感情が高くなる!
https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2021/20211217-001/
※4 髪のキメ、髪の感じ、髪のパサつき、髪のまとまり、髪のなめらかさ、髪の指通り、髪のからまり、髪のつや、髪の状態、髪のダメージケアがされている、の10項目。
※5 (触れた後のオキシトシン量ー触れる前のオキシトシン量)/触れる前のオキシトシン量×100
※6 化粧時の感情の変化を客観的に測る尺度で、12個の下位尺度からなる。
花王ニュースリリース(2018年7月12日):化粧時の感情を評価する言葉から12の感情因子を抽出し、感情の評価尺度を作成 https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2018/20180712-002/