1.開発背景

 化粧品で広く使われる保湿剤と油剤には、それぞれ優れた利点がある一方で、処方設計上の制約や使用感の課題が存在します。
 低分子保湿剤(グリセリン、プロピレングリコール等)やヒアルロン酸ナトリウムなどの保湿剤は、高い保湿効果としっとりした感触を容易に付与できます。しかし、油剤のような適度な皮膜感を付与しにくく、高配合時ではべたつき感が強くなる課題もあります。
 一方で、マカデミア油やオリーブ油に代表されるエモリエント油剤は、肌なじみの良さや皮膚の柔軟性向上といった効果に優れますが、親水性が低いため水系製剤に添加する場合は界面活性剤の併用が欠かせません。
 そこで私たちはこれらの課題を解決し、油剤と保湿剤の機能性と感触面を両立させる「水性保湿油」の開発に着手いたしました。

図1. 「水性保湿油」について

 第1世代の水性保湿油として開発した「ウィルブライド® S-753」は、透明な化粧水に乳液のような潤い感を付与できるほか、グリセリンと同等レベルの保湿効果を有する原料で、スキンケア(化粧水・乳液)からメイクアップ(ファンデーション、リップグロス)まで幅広く採用されています。
 さらに、新たな機能を付与した第2 世代水性保湿油も開発しました。第2 世代はウィルブライド® S-753 の良好な使用感を維持しつつ、以下のような高機能性を備えています。

  • SPF ブースト効果「グリモイスト® ME-26」
  • テカリ抑制とツヤ付与効果「ウィルブライド® BS-03」
  • 保香効果「アクロビュート® 60MB-63」
  • 有効成分の浸透促進効果「マクビオブライド® MG-20P」

 そしてこの度、化粧品原料を取り巻く環境変化、特にサステナビリティ意識の高まりを踏まえ、第3 世代の水性保湿油として下記特長に優れる100%植物由来原料「NATUWIL® TP-01」を開発しました。

 NATUWIL®は植物由来でありながら、ウィルブライド® S-753 同様に化粧水のような水系製剤に乳液のような潤い感を付与でき、べたつきを抑えつつ保香効果や有効成分の浸透促進効果も併せ持つ多機能原料です。NATUWIL®は、植物由来原料を検討している企業に適した原料を提供するとともに、既存処方の感触改善や上記機能性(べたつき低減、保香効果、浸透促進効果)を付与できるため、幅広い企業ニーズに対応可能です。

図2.第3世代水性保湿油「NATUWIL®」

 

2.グリセリンなど配合時のべたつき低減効果

 NATUWIL®配合により、グリセリンやキサンタンガム、ポリグリ系乳化剤を使用してもべたつかないリッチなテクスチャーを付与できます。

図3 NATUWIL® TP-01 配合によるべたつき低減データ

 

 <装置>
 静動摩擦測定器 Tribomaster TL201Ts(Trinity-lab. INC.)
 <方法>
 下記水溶液の動摩擦係数を測定し、NATUWIL®によるべたつき低減率を算出した。

3.香りを長時間持続させる保香効果

 NATUWIL®配合により、香料の持続性を向上することが可能です。

図4 NATUWIL® TP-01 香料保持効果

 <方法>
① 70mm のろ紙へ下記のエタノール溶液を0.25g 塗布した。
② 塗布してから2,4,6 時間後の各試料の香りの強さについて、塗布直後を5 点とし、官能評価を行った(N=5)。

図4 NATUWIL® TP-01 香料保持効果

4.親水性有効成分の肌への浸透促進効果

 NATUWIL®を水系処方に配合することで処方の疎水性が高まり、親水性有効成分の皮膚への浸透性が向上することができます。

図5 NATUWIL® TP-01 有効成分の浸透促進効果

 <方法>
① ドナー液(下記簡易化粧水処方)、レセプター液(リン酸緩衝液:pH7.2)を調製した。
② ドナー液から人工膜(STRAT-M® :表皮モデル)を通して、レセプター液へ透過 (STRAT-M はMerck KGaA の登録商標です。)した。
③ 2 時間経過後のレセプター液をサンプリングしHPLC で求めたナイアシンアミド濃度から透過率を算出した。

図5 NATUWIL® TP-01 有効成分の浸透促進効果

5.まとめおよび今後の展望

 このたび当社は、第3 世代の水性保湿油として、100%植物由来の水性保湿油「NATUWIL®TP-01」を開発しました。本原料は、化粧水に乳液のようなしっとりとした潤い感を付与すると同時に、油剤との高い相溶性を有します。さらに、グリセリンやキサンタンガムなどによるべたつきを抑え、ナイアシンアミドなどの親水性有効成分の浸透を促進します。加えて、塗布後の香り持続性を向上させる効果を備えた新規原料です。今後も特色ある原料の開発を継続し、新製品のご提案を通じてお客様の課題を根本から解決できる技術提供に努めてまいります。