2026年2月号

龍涎香の重要香気成分を受容する嗅覚受容体

月号・特集 Cosmetic Science 2026年2月号
論文No 05
著者所属 花王株式会社 感覚科学研究所
著者 高瀬 鍛/吉川 敬一
タイトル 龍涎香の重要香気成分を受容する嗅覚受容体
論文の概要(要約) 龍涎香(アンバーグリス)はマッコウクジラ由来の貴重な香料で、主要香気成分は(-)-アンブロキシドである。本研究は、これを認識するヒト嗅覚受容体を同定し、香りの心地よさに関与する分子メカニズムを明らかにした。378種の嗅覚受容体を発現させたレポータージーンアッセイにより、OR7A17が(-)-アンブロキシドに最も強く応答し高い選択性を持つことを示した。OR7A17には機能低下型多型I46Tが存在し、東アジア人で頻度が高い。31名の試験では機能型と非機能型で検知閾値・感覚強度に有意差はなかったが、非機能型集団では心地よさ評価が有意に低く、「樹木」の香りの質も感じにくかった。龍涎香への嗜好の地域差を分子レベルで説明する知見である。
研究目的 龍涎香の主要香気成分である(-)-アンブロキシドを認識するヒト嗅覚受容体を同定し、香りの心地よさ(快)の個人差・地域差を説明する分子メカニズムを明らかにする。
手法 HEK293T細胞を用いたレポータージーンアッセイで378種の嗅覚受容体の応答を測定し、OR7A17の遺伝子多型(rs10405129)解析及び機能検証を実施した。31名の日本人試験参加者に対し検知閾値、感覚強度、心地よさ、匂いの質評価を行った。
主要成果 OR7A17が(-)-アンブロキシドに最も高感度かつ選択的な嗅覚受容体として同定された。I46T多型はタンパク質の膜発現量を低下させ、非機能型集団では心地よさ(p=0.017)と「樹木」の質評価(p=0.008)が有意に低下した。

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