2026年7月号

外的環境ストレスによる皮脂の酸化と質量分析による機構解明制御

月号・特集 Cosmetic Science 2026年7月号
論文No 04
著者所属 東北大学大学院農学研究科 食品機能分析学
著者 伊藤 隼哉/仲川 清隆
タイトル 外的環境ストレスによる皮脂の酸化と質量分析による機構解明制御
論文の概要(要約) 皮膚は紫外線・大気汚染・常在菌など多様な外的環境ストレスに常時さらされ、最外層の皮脂は脂質バリアとして皮膚を守る一方で酸化されやすく、皮脂酸化はニキビ、シワ、色素沈着など多様な皮膚障害と密接に関わる。本稿では、皮脂中で酸化されやすいスクアレン(SQ)とリノール酸(LA)に焦点を当て、ナトリウム付加体を活用したHPLC-MS/MSによりヒドロペルオキシドの異性体を高選択的に識別する独自手法を用い、皮脂中で起きている酸化反応の機構を分子指紋レベルで解明した成果を紹介する。ヒト皮脂においてリノール酸はフリーラジカル酸化、スクアレンは一重項酸素酸化と、互いに異なる機構で酸化されることを世界で初めて示した。
研究目的 皮脂を構成する脂質が、どのような酸化機構を経て酸化されているかを質量分析により正確に解明することを目的とした。
手法 皮脂中で酸化されやすいスクアレン(SQ)と遊離脂肪酸リノール酸(LA)に焦点を当て、ナトリウム付加体を活用したHPLC-MS/MSにより、ヒドロペルオキシ基の結合位置や立体構造の異なる異性体を高選択的に識別し、ヒト皮脂中の酸化機構を解析した。
主要成果 被験者11名全員の皮脂からリノール酸ヒドロペルオキシド(LAOOH)を初めて直接検出し、リノール酸由来は4種のフリーラジカル酸化異性体、SQ由来は6種のほぼ等量の一重項酸素酸化異性体が検出された。ヒト皮脂中でリノール酸はフリーラジカル酸化、スクアレンは一重項酸素酸化と、互いに異なる機構で酸化されることが世界で初めて示され、皮脂中の酸化度合いは血漿中ホスファチジルコリンの十~百倍程度高いことも明らかとなった。

※ 閲覧にはCosmetic Scienceデジタル版の
会員登録が必要です