ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:釘丸和也)は、原料の形状や特性に着目した研究により、クリーム製剤の角層保護機能を進化させることに成功しました。本技術を用いたクリームは厚く均一な膜を形成し、これまでの高保護タイプのクリームを上回る機能を発揮します。本成果はポーラ・オルビスグループから発売される製品に活用される予定です。

角層保護の重要性が高まっている

 私たちの肌は常に、乾燥やアレルゲンなど外からの刺激にさらされています。それらの刺激から肌や生体を守っているのは、肌の最も外側の「角層」です。ところが、マスク生活が定常化した昨今では、多くの方が肌あれ・かゆみ・ニキビといった炎症を伴う肌トラブルが起こりやすくなったと言われています。これはマスクの着脱による擦れや温度・湿度の急な変化などに肌が対応しきれず角層のバリア機能がゆらいでしまう※1ことが一因だと考えられます。そこで、自社で保有する中でも高い角層保護機能を発揮するバリア製剤(クリーム)について、機能をさらにアップさせる研究に取り組みました。 
※1 外部環境や体調に応じて変化すること

 保護膜を構成する粘土鉱物※2や、その分散に着目し保護機能の向上を目指す 

 ポーラ化成工業では、肌表面をぴったりと覆う保護膜を形成し角層を守るバリア製剤の技術を保有しています。バリア製剤の主役は粘土鉱物に由来する層状の微細な粉体で、これが角層の上を物理的にカバーすることで保護機能を発揮します。
 そこでまず粘土鉱物に着目し、肌をカバーする際の隙間を極力減らせるよう、従来使われていたものよりも大幅に粉体の面積が大きい「ベントナイト」(図1)という種類を採用しました。
 さらに保護膜の機能を引き上げる策として、①ベントナイトが肌を均一にカバーできるようクリーム中で均一に分散させる検討と、②保護膜に厚みを持たせるためベントナイト自体に厚みを出す検討を行いました。
※2 粘土を構成する主成分鉱物

高い保護機能を発揮するクリーム製剤の開発に成功 外部刺激に負けにくい肌へ 

 検討①では、ベントナイト分散用のオイルの「なじみ」に着目。探索の結果、ベントナイトのなじみに優れ、細かく均一に分散できるオイルを見出しました。このオイルとベントナイトの膜は均一でなめらかだったことから、ベントナイトが塊にならず均一に広がった膜ができていると考えられます(補足資料1)。検討②では、ベントナイトの「かさ」を増やすオイルを探索し、ベントナイト自体に厚みを出すことに成功しました(補足資料2)。
 これらを用いて新たなバリア製剤を開発しバリア機能を検証すると、従来のバリア製剤よりも保護機能が向上していることが確認できました(補足資料3)。これは、従来のバリア製剤よりも大きく厚いベントナイトが肌を均一にカバーできているためだと考えられます(図2)。

 ポーラ化成工業では今後も、バリア機能がゆらぎやすい敏感肌の方をはじめ、お客様一人ひとりのニーズに応えることのできる技術の開発を継続していきます。

【補足資料1】 ベントナイトとなじみの良いオイルの選定について

 ベントナイトの分散の鍵は、クリームのベースとなるオイルとの「なじみ」です。なじみやすいオイルの中では、ベントナイト同士が塊にならず均一に分散します。
 ベントナイトとオイルがよくなじむと、アスファルトが雨に濡れたときのように見た目の色が濃くなります。そこで色の濃さを指標にベントナイトへのなじみが良いオイルを選定しました(図3左)。
 顕微鏡観察で分散性を検証すると、選定したオイル中では実際にベントナイトの分散性が明らかに向上し(図3中央)、塗ったときに均一な膜になることが確認できました(図3右)。 

【補足資料2】 ベントナイトの厚みを増すオイルの選定について

 ベントナイトは、自身の層の間にオイルを吸収する性質があります。そこで、オムツが吸水すると膨らむように、オイルを吸収させて膨張させようと考えました。
 さまざまなオイルをテストし、ベントナイトの「かさ」を増すことができるものを選定しました(図4)。さらに、選定したオイルは、実際にベントナイト自体の厚みを増すことが分かりました(図5)。

【補足資料3】 開発品の保護機能について

 水分蒸散を防ぐ働きを指標に、今回開発した新バリア製剤の機能を検証した結果、温度・湿度が変化する環境において、新バリア製剤は従来のバリア製剤より水分蒸散量を低く抑えることを確認できました(図6)。